語学学習のコツ【第二言語習得論&脳科学の観点から】

このページでは、語学学習全般に役立つ知識を紹介していきます。人間の脳の特性や言語習得のプロセスを知っておくことで、効率的に外国語学習を進めることができます。

暗記のコツ

語学習得には暗記を避けて通ることはできません。科学的に正しいやり方で効率よく覚えていく必要があります。そのために、脳の特性を理解しておくことが重要です。

忘却曲線

心理学者エビングハウスによる有名な実験で、無意味な単語を暗記してどれだけ記憶を保持できるかを調べました。結果は、学習終了直後から忘却が始まり、20分後には約60%、一か月後には約20%しか思い出すことができないというものでした。一日で100個の単語を覚えても、一か月後には80個は忘れてしまっているということになります。

忘れてしまうのだから勉強しても意味がないということではありません。完全に忘れる前に復習を行うことで記憶を強固にし、忘却曲線を緩やかにすることが可能です。忘却曲線から導かれた最適な復習タイミングは、①1週間後、②①の2週間後、③②の1か月後だと言われています。復習回数が増えるにつれ、再度覚えなおすのにかかる時間も短くなっていきます。反対に、一か月以上復習をしないと情報は完全に忘れ去られ、一から覚えるのと同じだけの時間がかかるそうです。忘却曲線を考慮して学習スケジュールを組むことで、学習効果を最大にすることができます。

How to beat the forgetting curve | Easygenerato

アウトプットの重要性

記憶の定着に有効なのは、インプットよりもむしろアウトプットだということが指摘されています。インプットとは、テキストや単語帳を見て情報を脳に入れることです。アウトプットはその情報を思い出して問題を解くような行為を指します。アウトプットの中でも、特に人に説明するのが効果的だと言われます。

単語の暗記では、覚えたい単語を見たり書いたりするよりも、単語帳を使って思い出す回数を増やすほうが最終的に記憶に残る可能性が高いです。

ペンキ塗り

世界記憶力選手権で優勝した池田義博さんによると、暗記は「ペンキ塗り」のように行うのがよいそうです。壁にペンキを塗る際に、一回でムラや隙間なく完璧に塗るのはとても難しいと想像できると思います。一回の塗りは薄くても何度も同じところに重ね塗りをすることで、綺麗な壁が完成していきます。暗記も同じで、何度も復習をすることで知識が確実なものになっていきます。忘却曲線の話とも繋がりますが、忘れることを前提に学習プランを組みましょう。

もう一点、「ペンキ塗り」の話で注意しなければならない点があります。あまりに広い範囲を一度に取り組むと、薄く一回塗るだけで膨大な時間がかかってしまいます。さらに暗記の場合はペンキと異なり、早く二度目を塗らないと一度目の記憶は薄まっていきます。こういった場合は、対象範囲を分割して、分割した部分ごとに完成させていくのが有効です。

脳の特徴から考えるベストな学習法

以上を総合して考えると、一度で完全に覚えようとするのではなく同じ単語を複数回、数日おきに学習する、学習の際はテスト形式で思い出す練習をする、というのが最も効率が良いようです。これを実践するには、暗記カードアプリの使用がおすすめです。復習のタイミングを自分で考えないで済む、手書きでカードを作る手間が省ける、スマホでいつでもどこでも勉強できる、等のメリットがあります。

忘却曲線の考え方を応用して適切なタイミングで復習ができる暗記カードアプリです↓ 暗記アプリはたくさんありますが、このアプリがシンプルで一番使い勝手がいいです。Apple版は有料(3000円買い切り)となってしまいますが、学習のストレスを軽減し、暗記にかかる時間を節約できると思えば安い買い物だと思います。PC版、アンドロイド版は無料です。

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言語の難しさ=母語との遠さ

言語習得の難しさはその言語が母語とどれだけ似ているかによって大部分が決まります。極端な例を言えば、東京出身の日本語母語話者と英語母語話者が同時に大阪弁を学習し始めたとしたら、日本語母語話者が圧倒的に早く大阪弁を習得することは言うまでもないでしょう。反対に第二言語として英語を勉強する際は、インド・ヨーロッパ語系言語を母語とする人にアドバンテージがあります。

このことにより絶望する必要はなく、英語学習でつまずいた際に母語と全く異なる言語を学習しているのだから仕方がないと気持ちを切り替えることが重要だと思います。韓国語などの日本語に近い言語を勉強してみて外国語が話せるという感覚を知るのもいいかもしれません。

また、母語が第二言語習得に影響を与えるのはもちろんですが、既に第二言語を習得している人が第三言語を学ぶ場合は、第二言語も第三言語の習得に影響を及ぼします。英語の知識があれば、フランス語やスペイン語を学ぶのがスムーズになります。言語はたくさん学べば学ぶほど簡単になると言われているのはこのためです。これこそが多言語学習の面白さでありアドバンテージであると思います。

臨界期仮説について知る

「臨界期仮説」とは、一定の年齢を過ぎると外国語の習得が不可能になるという仮説です。現段階では仮説となっていますが、大人になってからネイティブのようになるのはほぼ不可能であるというのは、外国語学習に取り組んだことのある人なら誰でも実感しているのではないでしょうか。

ここで大切なのは、臨界期を過ぎていない子供が自然に言語を身に付けるプロセスと、大人が外国語を学習する方法は根本的に異なっているということを認識することです。これを端的に表した表現が「Older is faster, younger is better」です。長期的に見れば若い時に言語を学び始めた人の方がより高いレベルに到達できるのは事実です。しかし、大人の学習にも優れた点があります。それは、今持っている認知能力を活用して素早く学習することができるという点です。例えば、子供が言い間違えをしながら自然と身に付ける文法を、大人はより短期間で知識として理解することができます。単語についても、大人は語源を活用したり文章と一緒に覚えるなど何かと関連付けて暗記するのが得意です。

「わかる」と「できる」は違う

前述の通り、大人が効率的に第二言語を習得するには文法の学習が欠かせません。ですが、文法書を読んで内容を理解したからといって、すぐにそれを使いこなせるようになる訳ではありません。「She goes」の動詞についている”三単現のs”を知識としては理解しているのに、英会話や作文となるとsが抜け落ちてしまうということはよくあります。

この現象は「容量の限界」という考え方で説明が可能です。人間の脳が一度で処理できる量には限界があるため、その限界を超えた部分には注意が払えなくなりミスが生じるというものです。ミスをなくすためには、その言語に慣れ、無意識で処理できる範囲を広げていく必要があります。これに関連して、最近ではワーキング・メモリー(作業容量)が大きい人の方が外国語学習に適性があるという研究もなされています。

おすすめ書籍

このページでご紹介したような言語学習に役立つ知識が得られる書籍をご紹介します。文法などの解説ではなく、第二言語習得や脳に関する書籍です。

白井 恭弘『外国語学習に成功する人,しない人』(岩波科学ライブラリー)

第二言語習得論について例を交えながら分かりやすく解説しています。研究で明らかになった事実をどのように日々の学習に落とし込んでいくかというところまで書かれているので、非常に実践的な本でもあります。外国語学習を始める前に読んでおくことをおすすめします。

Amazon.co.jp: 外国語学習に成功する人,しない人-第二言語習得論への招待 (岩波科学ライブラリー) eBook : 白井 恭弘: Kindle Store
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白井 恭弘『外国語学習の科学』(岩波新書)

『外国語学習に成功する人,しない人』と同じ著者の新書で、内容も重複している部分が多いですが、より詳しく解説されているので合わせて読むと理解が深まります。

Amazon.co.jp: 外国語学習の科学-第二言語習得論とは何か (岩波新書) eBook : 白井 恭弘: Kindle Store
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新多 了, 馬場 今日子『はじめての第二言語習得論講義』(大修館書店)

ワーキングメモリや外国語適性、学習の動機づけ等について詳しく書かれています。専門的な内容ですが、例が豊富で分かりやすいです。

Amazon.co.jp: はじめての第二言語習得論講義: 英語学習への複眼的アプローチ : 新多 了, 馬場 今日子: Japanese Books
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マーク・ピーターセン『日本人の英語 』(岩波新書)

母語が外国語に与える影響を知ることができる書籍です。このような知識を持っておくことで、外国語を話す際の典型的な間違いを回避することができます。

日本人の英語 (岩波新書)
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池谷裕二『記憶力を強くする』(ブルーバックス)

記憶と脳に関する様々な知識を得ることができる本です。忘却曲線の話も載っています。天才に見える人も、効果的な学習の積み重ねでできているのだということが分かます。「継続は力なり」という言葉がありますが、そんな当たり前のようなことも脳科学の面から考えてみると納得感があります。

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池田 義博『記憶力日本一が教える“ライバルに勝つ”記憶術』(世界文化社)

世界記憶力選手権で最多優勝の記録を持つ池田義博さんの書籍です。暗記が得意な人は才能があるだけではなく、様々な工夫をしながら暗記をしているのだということが分かります。普段の勉強に応用できるテクニックも多く載っています。Kindle Unlimitedで無料で読めます。

記憶力日本一が教える“ライバルに勝つ”記憶術 | 池田 義博 | 科学・テクノロジー | Kindleストア | Amazon
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